1.地域の木材を地域の技術で ~手近で身近な家づくり~
わたしたちは地域のアーキテクトビルダー(設計し施工する者)として、地場産の木材をつかって、地元の職人とともに家を建てるスタイルをとっています。このスタイルは、少なくとも戦前までの住宅づくりの現場では「あたりまえのこと」として成り立っていました。
「材料」に応えるために「技術」が進展し、またその「技術」の更なる飛躍のために「材料」が淘汰される。こうして培われつづけたバランスが、戦後に登場したさまざまな新建材と、これらの乱用を後押しする法律の改訂を受けて、大きく崩れようとしています。
「とりあえず」の性能を確保するためのさまざまなボード類と、これらを貼りつけるだけの職人。こうした風景が家づくりの現場を塗り替えつつあります。
こうした「戦後の家づくり」の方向性は、住宅の「最低限の品質の確保」という点において、まさに最低限の成果を挙げてきました。その一方で現在、わたしたちは戦後に植林された杉などの間伐材(かんばつざい)の安定的な供給と、伝統的な木造技術を身につけた熟練した職人たちの継続的な協力とを得やすい環境にあります。
こうした現況を吟味し、有効に活用することで、かつてのバランスのとれた「あたりまえ」の家づくりが再び、わたしたちの手の届くところにきています。身近な材料資源をつかって、身近な技術でつくる家。それは身の丈に合った、ぬくもりのある「生活の器」です。