オタマコンボチの春(2019)
けんちく工房邑の敷地に3月末頃から聞こえはじめていたウグイスの鳴き声も、今ではかなり上手になってきました。敷地の全域にはタンポポをはじめ、春の野草の花が咲き乱れています。
敷地内の池には毎日のようにカルガモやアオサギがやってきて、餌をあさっています。地名が沼崎というのに、今は周辺のどこにも沼や池や小川がないので、ここにやってくるのでしょう。カルガモは必ず2羽のつがいで、アオサギはいつも1羽で飛来します。数年前には池の中之島の草むらにカルガモが抱卵中のタマゴ7つを発見しましたが、残念なことにその後カラスに襲われ、みんな食べられてしまいました。
2週間ほど前には池の4カ所にゼリー状のカエルのタマゴがあるのを見つけました。今ではそのタマゴもみなオタマジャクシになって、泳ぎだしていきましたが、この4ヵ所だけでも1,000匹以上いたのではないかと思います。
こうして生まれ出たカエルの子は、いつのまにか池に住みついたザリガニや水鳥に食べられる危機を乗りこえて、カエルになるまで生きのびることができるのでしょうか。今年もまた梅雨時にはいつものような大合唱を聞かせてもらえるのでしょうか。
赤城毅彦編『茨城方言民俗語辞典』(1991年初版、東京堂出版)という本があります。編者は茨城県明野町の人で、それぞれの言葉に、それが使われている市町村が細かく示されている立派な本です。
この辞典でオタマジャクシを探したところ、オタマコンボチ(またはその変化形)しか見つかりません。別のいい方ではケーロゴ(蛙の子)というものもありますが、オタマジャクシという単語が見当たりません。
オタマコンボチを茨城出身の若い人たちに訊ねてみたところ、ほとんどの人が「わからない」といいます。高齢の人はわかるのですが、オタマコンボチはもはや全国共通語に乗っ取られて死語になりつつあるようです。明治以来の方言撲滅教育のためなのでしょうが、オタマコンボチという言葉には、なにかしら可愛さ面白さが感じられて、子どもたちがまた使うようになればいいな、と思ったりするのです。(Tsushima)